副社長には内緒!〜 Secret Love 〜
「莉乃……」
後ろから、副社長の時とは違うその言葉に、莉乃の心臓は一瞬で音を立てた。

(やめて。ここでその声で、その名前を呼ばないで!)

ギュッと締め付けられるような思いが誠に伝わらないように、必死で莉乃は振り返らずドアを開いた。

「……失礼します」
何度目かわからないその言葉だけを何とか絞り出すと、莉乃は部屋の外に出た。

そしてカバンを手にすると、急いで会社のビルから外に出て駅に向かった。

(誠から離れないと……。何かを口走ってしまいそう……)


泣きたくなる気持ちを押さえた莉乃を、一人の男が見ていることに気づいていなかった。



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