副社長には内緒!〜 Secret Love 〜
店の前で社長を見送ると、どちらともなく目を合わせると、大きく息を吐いた。

莉乃はハッとし、すぐに目を逸らした。

誠は、その意味をすぐに問いただしたかったが、店の女将や運転手がまだいる中でそれもできなかった。

「先に、水川さんを自宅へ」
車に乗り込み、誠は運転手に伝えた。

「駅で大丈夫です」
莉乃のその言葉に、さすがに怒りを露わにした目を誠は向けた。
莉乃は、その本気の瞳に、
「ありがとうございます。お願いします」

「出して」
低く発せられた誠の言葉に、莉乃は下を向くと手をぎゅと握った。

20分ほどで莉乃のマンションの前に、静かに停められた車からすぐに降りると、
「ありがとうございました。お疲れさまでした」
そう言って、車中の誠の頭を下げた。
「お疲れ様」
誠は特に表情を変えることはなかったが、莉乃をジッと見つめた。
その瞳に耐え切れず、莉乃はすぐに踵を返すとマンションのエントランスへと足を踏み入れた。

莉乃がエントランスに入ったことを確認すると、
「出して」
一人になり、静かな車の後部座先のシートに深く体を埋めると、誠は大きくため息をついた。

(俺に守らせてくれないのか?)

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