副社長には内緒!〜 Secret Love 〜
そんな総一郎にかまくことなく、誠は走り出すと、そのまま崩れ落ちた莉乃をなんとか、寸前で抱きとめた。


「莉乃!!莉乃!」

涙を流し、虚ろな目をした莉乃の顔を覗き込むと、頬を軽く叩き、
「おい!わかるか?俺だ!」
誠は何度となく莉乃を呼んだ。
ようやく莉乃の視線が誠の視線とぶつかり、莉乃の瞳に生気が戻った事を確認して、誠は力一杯莉乃を抱きしめた。
「ま……こ……」

「よ……か……った……」
誠は絞り出すように言うと、莉乃の肩に頭を埋めた。

「お前に、何かあったら、俺は……俺は……」

莉乃の解放劇の歓喜から一転、副社長が地味な秘書を抱きしめる様子を、社員はただ見ていた。

『……大切な秘書を慰めてるだけでしょ……?』
『あれは……どういう状況?』

いろいろな憶測が飛び交っていた。
< 153 / 323 >

この作品をシェア

pagetop