副社長には内緒!〜 Secret Love 〜
「副社長……莉乃の上司の方ですね。莉乃はお世話になっております」
父親が頭を下げたのを見て誠は慌てて声をかけた。

「頭をお上げください。私がいながら、こんなことになり、こちらこそ誠に申し訳ありません」
誠は深々と頭を下げると、しばらくそのまま動かなかった。

「長谷川さん、顔をお上げください。こちらこそ娘の事でご迷惑をおかけしました」
莉乃の父は改めて詫びると、誠と一緒に少し離れたソファーへと座った。


そこで改めて、誠は莉乃の父に頭を下げた。
「いえ……。莉乃さんから伺っていたにも関わらず、未然に防ぐことができず、また莉乃さんの心の傷を増やすことになってしまい……。不徳の致すところです」
心痛な面持ちで言葉を発する誠を見て、莉乃の父はゆっくりと言葉を発した。

「莉乃から聞いていたんですか?」
その問いの意味を誠は少し考えた後、
「はい」
「そうですか……。この件は長谷川さんのせいではありません。むしろ長谷川さんが動いて頂いたからこそ、莉乃に怪我がなかったと思っています。本当にありがとうございました」
莉乃の父の言葉に、誠も少し息を吐いた。

「すみません。私の方で独断で申し訳ありませんが、前回の裁判記録などを拝見しました。たぶん、かなり刑が軽く、情状酌量されている気がしました。相手からもいろいろ言われたのではないですか?」

その誠の問いに、莉乃の父は少し悩んだような顔をし、
「はい、交際相手という事もありましたし、あの男の親が力を持っていて、かなり優秀な弁護士を……」
莉乃の父は言いにくそうに答えた。

「やはり。今回は私の方で弁護士や人を手配します。向こうにも手出しはさせません。きちんとした判決をしてもらいましょう」

「そんな……長谷部さんのご迷惑になるようなこと」
莉乃の父はそこまでしてもらう訳にはいかないと言った表情で誠を見た。

「そうさせてください。私からもお願いします」
誠の真剣な瞳に莉乃の父は何かを感じたようで誠をジッと見た。

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