副社長には内緒!〜 Secret Love 〜
莉乃も父の車を見送ると、
「副社長にも、ご迷惑を掛けて申し訳……」

「莉乃!」
莉乃の声を遮るように言われた言葉に、莉乃はビクっとして言葉を止めた。

「莉乃……。とりあえず、帰ろ?」
今にも泣きそうな莉乃の肩を抱き、誠は車の助手性に乗せた。

誠は自分のマンションに莉乃を連れてくると、莉乃をソファに座らせ、
「少し、待ってて」
というと、風呂に湯を張り、その間に温かいお茶を入れた。
そのカップを莉乃の手に握らすと、ゆっくりと莉乃を見た。

「もう、大丈夫だから。アイツはしばらく出てこれない。もうアイツは来ないから」
莉乃の横に座り、繰り返すように言うと、莉乃をおもむろに抱きしめた。

「本当に、よかった……」
消え入りそうな誠の声に、莉乃は「ま……こと?」と驚いたように呟いた。

「ナイフを突きつけられた莉乃を見た時、頭が真っ白になった。お前に何かあったら俺は……俺は……」
そこまで言うと、誠は顔を上げて莉乃の瞳を覗き込んだ。

「頼むから俺を頼って。一人で抱えるな。なんで急に俺を避ける?今日だってなんで、待ってられなかった?」
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