副社長には内緒!〜 Secret Love 〜
莉乃は努めて冷静に言葉を発したつもりだったが、誠にどう聞こえたかは分からなかった。

「え?」

明らかに驚いた表情をしたのは誠だった。
「なんていった?」
もう一度莉乃に聞き返した。
「間宮様という女性がお待ちです」
もう一度、静かに莉乃は言った。

(約束してたんじゃないの?)

「わかった」
それだけ言うと、少し強張ったような表情の誠は自分の部屋へと入っていた。

「少し出てくる」

にこやかに笑う間宮と目が合い、莉乃は慌てて頭を下げた。
「またね、秘書のお嬢さん」
フフッと笑った笑顔が莉乃の脳裏に焼き付いた。

「いってらしゃいませ」
それだけ言うと、莉乃は大きくため息をついた。

(もういい。すべてをやりなおそう。会社を辞めよう。これ以上一緒に仕事はできない)

そう莉乃は覚悟を決めた。
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