副社長には内緒!〜 Secret Love 〜
「どんな子だっけ?秘書の子って。お前から、あまり話でないよな」
弘樹は運ばれてきた、マルゲリータを一つ皿に取ると、タバスコをかけながら聞いた。
「どんな子って……」
誠は少し考える様にした後、表情を曇らせた。
「もうすぐ、付いて二年になる。恐ろしく地味で女らしさの欠片もない。いつも地味なスーツに黒縁メガネ」
「俺の秘書のイメージではないな。秘書ってきれいどころのイメージだ」
クスっと笑うように弘樹は言うと、誠にも「お前もちゃんと食えよ」と誠の更にピザを乗せた。
「だからだよ。親父が俺が手を出すことを懸念して、彼女を秘書にしたんだよ」
誠は少しうんざりしたような顔をすると、ピザを頬張った。
「なるほどな。親父さんらしいな」
「オイ!俺は仕事の女には手は出さないぞ」
「まあ、面倒だよな。社内の女は」
弘樹も覚えがあるようで、苦笑すると呟くように言葉を発した。
「そうだよ。俺は俺に本気にならない女がいいんだよ」
「誠……お前さ」
「いいんだよ。俺は。どうせそのうち見合いでもして政略結婚だよ」
自嘲気味に笑う誠に、弘樹もため息をついた。
「そんな始めから諦める必要はないだろ?まあ、それで?今日はいろいろ世話を焼いてもらったわけか。その秘書の子に」
弘樹は面白そうに言って、目の前にいたバーテンダーに追加のビールを頼んでいた。
そんな様子を見ながら誠は今日の莉乃を思い出して、また不思議な気持ちになった。