副社長には内緒!〜 Secret Love 〜
「じゃあお先に行ってくるね」
莉乃は言うと、バスルームに向かった。

(やばいな……初めからこんなんで私大丈夫?)
莉乃は鏡に映った自分の不安そうな顔を見つめた。

それでもいつまでもここにいる訳にも行かず、体を丁寧に洗い、バラの香りの浴槽にゆっくりとつかった。
広い浴槽の中で、膝を抱えると覚悟を決めるように、ギュっと目を閉じてから意を決して風呂から上がった。


(バスローブ……着る?)

体をふくと、じっとバスローブを莉乃は見つめた。
念のため持ってきたスエットもあるが、ここはどうするべきかを莉乃は思案した。


「誠先にありがとう。誠もどうぞ」
莉乃はリビングにいる誠に声を掛けた。


「ああ、入って来るよ」
そう言って振り返った誠は、特に莉乃を見て表情を変えることなくバスルームに入っていった。

(バスローブ姿勇気がいったんだけどな……。やっぱり私じゃ魅力ないのかな……)

莉乃は勇気を出してきたバスローブ姿を見ても、なにも表情を変えなかった誠を見て小さくため息をついた。

そして気分を変えるように、シャンパングラスを持つと、バルコニーに出て夜風に当たった。
月がきれいに見えていた。

「莉乃、寒くないか?」
ぼんやりとその月を見てた莉乃は、その声に振り返った。
濡れた髪をタオルで拭きながら、少し前がはだけたバスローブ姿の誠に莉乃はドキンとして目を逸らした。

(どうしてこの人はこんなに色気があるんだろ……。私より色気があるよね……)

莉乃はドキドキしながらシャンパングラスを見つめた。
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