副社長には内緒!〜 Secret Love 〜
「なあ、千堂君。水川君は急にきれいになったよな?」

(そんなこと、千堂さんにふらないで!)


「そうですね。こんなに美しい方だと存じませんでした」
あくまでビジネスライクに千堂は微笑を浮かべた。

(さすがだ。千堂さん。秘書の鏡……)

莉乃もそれに見習うと「恐縮です」と呟くように言うと、一瞬千堂がクスリと笑ったような気がしてジッと千堂を見た。
もういつも通りの秘書の顔の千堂に、気のせいだろうと莉乃は窓の外に目を向けた。




接待は滞りなく終了し、懸念したようなセクハラのような事もなく、終始和やかで仕事の話がメインの食事は莉乃にも勉強になることが多かった。

「水川君、本当にありがとう。君の的確な会話と接待術はさすがだな」
社長の言葉に、千堂も
「本当ですね。経済の話なんてどこの評論家かと思いましたよ」
二人に褒める言葉を貰い、莉乃は恐縮して頭を下げた。

「副社長は幸せ者だな。こんなしっかり者の秘書で。いや、千堂君に不満があるわけじゃないよ」
慌てて言った社長に千堂も莉乃も笑った。

「じゃあ、お疲れ様」
そう言って車に乗り込んだ社長を、千堂と莉乃は見送った。
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