副社長には内緒!〜 Secret Love 〜
「そんなことないですよ?」
莉乃は笑顔を作ると答えた。

「そう?美味しいもの食べたら元気になるよ」
千堂はニコッと笑い、莉乃の言葉をやんわりと否定するとクスリと笑った。

(敏腕秘書には通じないか……)

莉乃は観念し千堂とカウンターに座った。

「水川さん、お酒大丈夫だよね?」

「はい。好きです」

「食べたいものは?嫌いな物とかある?」
千堂はメニューに目を落としながら聞いた。
「ありません。私食べるのも作るのも好きなので」

(もう今日は美味しい物を食べて、飲んじゃおう)

「料理するんだね?意外だけど。じゃあ、適当に頼むよ?」
表情を少し柔らかくした莉乃に、千堂はそう言うと手早く注文した。

「私が料理するって意外ですか?」
千堂はメニューを置いて、莉乃を見ると
「ちょっとね」
と運ばれてきたビールを一口飲んだ。

莉乃もビールを口に含むと「おいしい」と息を吐いた。

「水川さんと2年以上仕事してるけど、こうやって飲んだの初めてだよね」
千堂は笑いながら言った。

「そうですね。私は以前はご存知の通りでしたし、こんな千堂室長も初めて見ました」
莉乃もジッと千堂を見るとクスリと笑った。

「俺だって仕事とプライベートはあるからね」
「そうですよね。千堂さんの俺ってなんか新鮮です」

そんな莉乃に、千堂は真顔になり、
「ちょっと聞いたけど、もう大丈夫なの?」

「はい。おかげさまで」

「そっか、よかった」
ホッとしたような表情を浮かべた千堂に、莉乃も小さく頭を下げた。


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