副社長には内緒！〜 Secret Love 〜
妙に冴えてしまった頭は、ベッドに入っても眠気はやってこなかった。

（眠らなきゃ…。あー！そう思うと余計に眠れない……）
頭の中を廻る悪い想像を消し去るように、莉乃はギュっと目を瞑った。


莉乃は目覚ましの音で目を覚ました。
何時に眠りについたのかわからなかったが、それほど体調は悪くない事に安堵した。

手早くパンをトーストし、コーヒーを入れ簡単にサラダを作ると新聞を読みながら朝食を取った。

眼下から見える景色を眺めると、

（誠はきっと話してくれる。それまで…は…。どういう話であれ、私が誠を好きな事には変わりない）

気合を入れなおすと、着替えをし化粧をすると家を出た。


「おはようございます」
秘書課に顔を出すと、千堂がもう来ていた。
「おはようございます、水川さん。昨日はありがとうございました」
変わらない笑顔の千堂に莉乃は安堵して、笑顔を向けた。

（落ち込んだ私を励ましてくれただけだな）

「こちらこそありがとうございました」
ホッとした表情を見せた莉乃に、

「そんなにホッとされるのもつまらないな」
莉乃に聞こえないぐらいの声で言った千堂に、

「え？」
莉乃聞き返すと、千堂は「いえ、何も」といつもの微笑みを湛えた。
< 218 / 323 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop