副社長には内緒!〜 Secret Love 〜
誠は真剣な目で正幸を見ていた。
「……水川さん、事実かい?」
正幸と誠の張り詰めた空気を感じながら、一向に目線を逸らさない二人の横で莉乃は慌てて言葉を発した。
「あ……はい。お付き合いさせて頂いてます」
正幸はまだ、じっと誠を見ていた。
しばらく、お互い睨み合うようにしていたが、正幸はふっと笑うと、
「どうやら本気みたいだな。 それならいいんだ」
「え?」
てっきり反対されると思っていた莉乃は、その正幸の言葉に驚いて動きを止めた。
「水川さん……。誠を頼むよ。前も言ったがフラフラしてたから」
微笑んだ正幸を見て、莉乃は恐々と尋ねた。
「私でいいんでしょうか?」
「いいもなにも、私は君なら大歓迎だよ」
「でも私には家柄もなにも……」
その言葉に、正幸は声をだして笑うと、
「家柄なんて何になるんだい?こいつを大切に思って、支えてくれる女性が一番必要に決まってるよ。大切におもってくれているんだろ?」
正幸の言葉に、莉乃は真剣な眼差しで正幸の瞳を見つめると、「もちろんです」そう答えた。
「それなら何もいう事はないよ」
「社長、お時間が……」
そんなふたりのやり取りに、千堂は特に表情を変えずに言葉をはさんだ。
その声に正幸は頷くと、
「誠、よかったな」
正幸は、あえて誠と呼び、それだけ言うと2人は副社長室を後にした。
その後姿を見送りながら、莉乃は理解も整理もできずにいた。
呆然とする莉乃に、
「驚かせて悪かったな……」
「びっくりした……」
放心して答えた莉乃に、
「今日の夜話そう?家に行くから。朝一の約束間に合わなくなる」
その言葉に、莉乃は時計を見ると、
「あっ!」
というと慌てて、資料を揃えた。