副社長には内緒!〜 Secret Love 〜
「なあ、莉乃?千堂に何か言われても本気になるなよ」
誠は腕の中で微睡む莉乃に聞いた。
「え?突然何?」
莉乃は唐突な質問に誠の顔を見た。
「たぶんアイツ、お前に声をかけてたんじゃないか?」
「ああ。冗談でしょ?きっと。なんとなくだけどわかるのよ。その人が本気かどうかって。千堂さんは私の事は好きじゃない」
「へえ、よくわかったな。アイツ昔すごく好きな女といろいろあったみたいで、それ以来本気で誰とも付き合わないって聞いたことがあるんだ」
「そうなんだ……だからあんなに素敵なのに彼女いないんだ」
莉乃は納得したように言葉を発した。
「素敵って!お前!ちょっと気持ち揺れたりしてないだろうな?」
ギュッと抱き寄せられ、誠の腕の中で莉乃はクスクス笑い声をあげた。
「揺れる訳ないでしょ」
「お前が俺に変な態度取るから、千堂が本気じゃなくても、莉乃が千堂の方に気持ちが向いてたらどうしようって大人げない態度とったよ……。アイツも挑発してくるし……」
誠は悔しそうな顔をした。
「かわいい部下が悲しんでいたから助けてくれたのかな。やっぱり千堂さんっていい人だよね」
チラリといたずらっ子の様な瞳を莉乃は向けた。
「おい!莉乃!!」
いつまでも笑っている莉乃に、誠は拗ねたような表情をすると、
「何笑ってるんだよ。頼むよ……。俺は心配でしかない。昔のままの恰好でいてくれた方がよかったよ……」
誠はお手上げというような仕草をした。
「大丈夫。私には誠だけだよ。だって他の人は触れられないもん」
莉乃は、誠の背中に手を回した。
そんな莉乃を可愛くて仕方ないといった表情で誠は見ると、
「誘ってる?」
イジワルそうな微笑みで誠は莉乃に聞いた。
「違う……んっ!」
その言葉を聞き終わらないうちに、誠は強引に莉乃の唇に押し入った。
「ま…こと!…ちが…ぁ……」
言葉にならなくなった莉乃を見ながら、唇をそっと離し誠はクスクス笑うと、
「違わないだろ?」
そう言うと、莉乃をまた自分の腕に押し込めた。