副社長には内緒!〜 Secret Love 〜
「触れていい?」
こんな確認をするのはもちろん初めてで。

「…うん。」
と小さく頷く莉乃をの唇に手を触れた。
それだけで、何か大切なものに触れた気がして、切なくなった。

その手を首筋から、頭の後ろに回すと、そっと莉乃を引き寄せた。
優しく莉乃の唇にキスを落とすと、自分の保身の為に言った。

「ホント、怖くなったらいつでもやめるから…。絶対言え。」
何故か、こんな時ほど、命令形になる自分が笑えた。
すぐにでも唇がふれる距離に莉乃を感じた。
「バラのいい香りがするな。」
本当に、いい香りがした。

以前、組み敷いた時の莉乃を思い出し、眠るように横になった。
しばらく、そのまま莉乃を抱きしめていた。
「大丈夫?」
莉乃に聞いたが、自分自身にも問いかけたような気がする。
「…うん。」
莉乃は、さっきよりリラックスしたように見え。俺は安堵した。
「怖くない?」
恐る恐る聞いた。

「前の事を思い出すとか、怖いとかそういうのは無いの。ただ、誠みたいに経験がないから…どうしていいのか…。」
莉乃の正直な言葉に、俺はびっくりした。

「莉乃は、何もしなくていいから、俺に預けて?俺の事だけ考えて。大事に抱くから。」
本心だった。
こんな俺に、こんなに愛しい気持ちを教えてくれた莉乃を大切にしたかった。
莉乃を幸せにしたかった。
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