副社長には内緒!〜 Secret Love 〜

(服……。何を着ようかな?テーマパークだし、歩くだろうし。デートでもない!)

(仕事だと思え!私!)


莉乃はクローゼットから、ジーパンに黒のニットを出し着るとブルゾンを羽織った。

(足元は、スニーカーでいっか)

さすがにカジュアルすぎる気がして、ゴールドの大ぶりの少し可愛らしいパールのピアスをし、髪をハーフアップにした。

じっと姿見に映る自分を見て、考えるのをやめて、莉乃は家を出ると待ち合わせの駅へと向かった。

「莉乃!」
「香織!おはよ」
香織は笑顔で莉乃の方に来ると、
「ホントありがとう!恩にきる」
と顔の前で手を合わせながら言った。

香織こと、浅野香織は莉乃の高校からの親友だ。
真っ黒な瞳、小さな唇、真っ黒の黒い髪。
美人という形容がぴったりだった。
莉乃も他人からは、美人という括りに入れられることが多いが、2人は全く異なった部類だった。

莉乃は柔らかで印象的な大きな茶色の瞳、すこしふっくらとした唇、ふわっとした髪。
かわいらしく感じる要素ばかりだが、可愛いといわれるより、美人と形容されることが多かった。
細身のスタイルと、168㎝という身長と服装のせいかもしれない。

香織は、客室乗務員という仕事柄もあり、人当たりがよく、2人でいる時にナンパをされても、いつも香織がうまく断ってくれていた。
その香織が、めずらしく慎重になって、莉乃に助けを求めることは珍しかった。

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