副社長には内緒!〜 Secret Love 〜
「誠……でいいの?誠さん?誠くん?あっまこちゃん?」
莉乃は恥ずかしさを隠すように、フフッと笑いながら誠を見上げ聞いた。
「バカだろ?お前。誠でいいよ、別に」
誠は急に見上げられたいたずらっ子のような莉乃の瞳に、一瞬動揺したが平静を装い目線を逸らした。
「じゃあ……誠。いこ?」
莉乃は少し照れたように笑うと、先に歩き出した。
今日はお酒も入っていない為、いきなりの呼び捨てに、恥しさが残り言葉が小さくなった。
そんな照れた莉乃を見て、誠もなぜか恥ずかしくなり、ごまかすように軽く首を振った。
(なんだよ……この感じは。いつもの俺はどこいった?)
誠はそんな気持ちを隠すように話を変えた。
「なあ、莉乃、あれ誰?」
目の前で楽しそうに手を振る、人気キャラクターを指差して誠は首を傾げた。
莉乃はその言葉に唖然として、誠の顔を見据えた。
「本気で言ってるの?知らないの⁉︎本当に?信じられない!」
莉乃はそういうと、ニコリと笑って、
「ねえ誠!一緒に写真撮って!」
莉乃は嬉しそうにキャラクターに向かって走りだした。
「おい、莉乃!」
誠も慌てて莉乃を追うと、莉乃は楽しそうにキャラクターの側に寄った。
パークのスタッフはそんなふたりを見て、「彼氏さんも一緒に!」と笑顔を向ける。
「いや…俺は…」
と言いかけた誠に、莉乃は腕を取ると、
「みんな待ってるから早く!」
と笑顔で係の人に自分のスマホを渡すと、誠を引っ張りキャラクターの横に立った。
誠は少し躊躇したが、嬉しそうな莉乃を見て、
「全く……」
というと、カメラに収まった。
『すごい、お似合いの二人……』
そんな周りの人からの声も莉乃は気にすることなく、今取られた写真を覗き込み嬉しそうな笑顔を向けた。
「ありがとうございます!」
莉乃はスタッフにお礼をいうと、すぐさま隣のショップのワゴンを見た。