副社長には内緒!〜 Secret Love 〜
「そういえば、今何に並んでるんだ?」
ポップコーンに手を伸ばしながら聞いた誠に、莉乃は誠の顔を見た。

「誠って早いの大丈夫?ジェットコースター系なんだけど……」
伺うような莉乃に、誠は少し考えて、
「いつ乗ったのかも思い出せないけど……たぶん大丈夫だろ」

誠は考えるような表情をした後、笑って言うと周りを見渡した。

「よかった!私これずっと乗ってみたかったの。そしてこれ乗ったらパレード見ようね!」

莉乃の屈託のない笑顔を見て、誠は「そっか」とだけ言うと、こういったアトラクションに過去殆ど乗ったことが無い事に気づいた。

莉乃はそんな誠を見て急に不安になり慌てて謝った。
「ごめんなさい!あの2人いないのに……なんか調子乗って……久しぶりだったから……楽しくて……」
しどろもどろに言葉を発した莉乃の頭をポンと叩くと、
「違うから。そのままでいいよ。俺ってこういうの乗ったことないな……て珍しくて。俺も初めての体験ばっかりで楽しいよ」

誠が優しく微笑んでくれたことで、莉乃はホッと胸をなでおろした。

ずっと来たくても来れなかったテーマパークに来れた事、そして隣に誠がいてくれることがなぜか安心できて、本当に莉乃は楽しかった。

「ありがとう……」
莉乃は心の底から零れ落ちた誠への気持ちを、素直に口に出すと誠を見た。

「ほら、進んでる」
そんな莉乃に気づくこともんなく、誠は莉乃の肩に手を回して前へと莉乃を促した。

いつもなら嫌悪感を露わにする莉乃だったが、嫌悪感を抱かない自分に気づかないふりをしてそのまま前へと進んだ。


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