雨の日、綺麗に咲く花は


昼時になるにつれて一般の人が減り、学生が増えた。

静かだった午前中に比べて少し賑やかになった頃、後ろから声が掛かった。
 

「花ちゃん、お昼行っておいで」

「あ、分かりました。この本だけ戻したらすぐ行ってきますね」


私はそう言うと、分厚い本を抱えて元あった場所へと戻しに行く。

こういう作業は宝探しみたいでワクワクする。

それを知ってか知らずか他の人の担当の本まで任されることも少なくなかった。


えー…っと、確かこの辺りのはずなんだけど。


私はとある棚の前に立つと一番上を見上げた。


「……高い」


これは脚立を使わないと無理そうだ。
この本を借りた人も苦労しただろう。


そこまでして、この本を借りたかったのだろうか。


”脳神経外科診療集”


本の表紙を見て何処かの医大生が勉強のために借りたのだろうと勝手に思った。


「……よしっ」


脚立を持ってきて、ゆっくりと足をかける。

< 12 / 37 >

この作品をシェア

pagetop