雨の日、綺麗に咲く花は


「それにしても花さん手慣れてましたね〜」

「え……?」

「旦那さんにもよくしてたんですか?」


あっという間に調子を取り戻したらしい彼は、さりげなくそう口にした。

その言葉にぎこちなく笑う。


『ハナ、やってくれー』

『もう、いい加減自分で出来るようになってよ』

『俺がやるよりハナがやった方が断然綺麗なんだから仕方ないだろ?』

『もう〜っ…』


懐かしい記憶が頭をよぎる。
三年前まで、毎日のように彼のネクタイを結んでいたことを思い出した。


「花さん?」

「あ、うん。そうなの」

「やっぱりそうだと思いました。だって今まで自分が結んできた時より全然綺麗ですもん」

「田辺くんだって毎日やってたらそのうち慣れるよ」


そうかな〜?と首をかしげ、ネクタイに手をかける彼を見ながら、私は胸の奥が熱くなるのを感じていた。
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