雨の日、綺麗に咲く花は


「こんにちは」


昨日言っていた男の子が姿を現したのは、お昼を過ぎてすぐのことだった。

相変わらずその手には分厚い本を抱え、ニッコリ笑ってそう言った彼。


本当に来たんだ…。


「こんにちは」


戸惑いを隠せていたかは分からない。
それでも出来る限りの笑顔を作って彼に返した。


「……」

「……」


お互いの間に沈黙が流れる。
これは私が何か言うべきなのだろうか。

こういう状況に陥ったことがない私には、この沈黙を破るのは難易度が高すぎて。
出来れば向こうからそれを破って欲しいと願いつつ、目の前に居る彼を見上げる。

すると、小さく咳払いをした彼は思いも寄らないことを言い出した。


「お昼、もう食べましたか?」

「え…?」


私に目線を合わせる事なく、下を見て話す彼の頬がほんのり赤らんだ気がした。



< 35 / 37 >

この作品をシェア

pagetop