雨の日、綺麗に咲く花は
「こんにちは」
昨日言っていた男の子が姿を現したのは、お昼を過ぎてすぐのことだった。
相変わらずその手には分厚い本を抱え、ニッコリ笑ってそう言った彼。
本当に来たんだ…。
「こんにちは」
戸惑いを隠せていたかは分からない。
それでも出来る限りの笑顔を作って彼に返した。
「……」
「……」
お互いの間に沈黙が流れる。
これは私が何か言うべきなのだろうか。
こういう状況に陥ったことがない私には、この沈黙を破るのは難易度が高すぎて。
出来れば向こうからそれを破って欲しいと願いつつ、目の前に居る彼を見上げる。
すると、小さく咳払いをした彼は思いも寄らないことを言い出した。
「お昼、もう食べましたか?」
「え…?」
私に目線を合わせる事なく、下を見て話す彼の頬がほんのり赤らんだ気がした。