雨の日、綺麗に咲く花は


「お疲れ様でした」

「お疲れー」


仕事が終わり裏口から出ると、外は暗闇が支配していた。

街灯も何もないこの通りはほんの少しの明かりさえもなくて、23時を過ぎた今では真っ直ぐ歩くのも一苦労だ。


「……暗い」


まるで黒い海のよう。飲み込まれでもしたら私なんて一溜まりも無いだろうな。

それならそれで彼の元へいけるし、ここで溺れ死ぬのもそう悪くないのかもしれない。

楽に生きているとは言えない私は、今までにも何度かそう望んだことはあった。

夫の訃報を聞いたときは特にそうだ。
彼の元へ行きたくて、彼に会いたくて、いっそのこと死んだ方がマシだと思った。

川に身を投げようとした所を、危うく彼の親友である壮介君に止められ命拾いしたのを昨日のことのように覚えている。


それでも今こうして生きていられるのは、きっと夫がそれを望んでいないと分かっているからかもしれない。


『ハナ』

「……分かってる」







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