雨の日、綺麗に咲く花は


「花さんって見た目可愛らしいのに、中身はクールですよね」

「クールって…、そんなことないと思うけど」

「いやいやいや、そんなことありますって!」

「それって、褒め言葉じゃないよね?」

「はいっ?…いや、褒め言葉、です…」


思い切りどもってるし。


「田辺くんは見た目男前なのに中身は子どもだよね」

「えっ?」

「ふふ、これでお相子ね」

「花さーん…」


ブツブツと文句を言っている田辺くんに背を向けると、私は開館の準備に取りかかった。

ここは名門校の敷地内にある図書館で、昼休みの時間や夕方になると高校生や大学生でいつも溢れかえる。なので一般客は午前中や夕方までの間に使用することが多いのだ。


入り口の前に開館を知らせる看板を置いた時、丁度学校の鐘が鳴る。


「今日も長いのかな…」


いつも同じ時間に鳴るこの鐘は、私の長い一日を予感させる合図でもあった。


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