僕と家族と逃げ込み家
何も期待されないのも何だかだが、過度の期待は重荷だ。
母親の話から、子守でいいのだと分かり少し気が楽になった。
その時だ。デッドスペースから「うわっ!」と笹口の声が上がり、その直後に「こらこら」と美山の慌てた声が聞こえた、と思ったら「ギャーッ」と叫び声が上がる。
何だ何だ、何事が起こっているんだと驚きデッドスペースに駆け込むと……嘘だろう?
僕はそこで立ち尽くし目を見開いた。
僕に一歩遅れてやって来た母親が「あっ」と小さな悲鳴を上げると、慌てたように「二胡ちゃん、止めなさい!」と言いながらその小さな身体に抱き付く。
――これはいったいどういうことだ?
美山は涙目の幸助の頭を撫でているし、幸助の頬には引っ掻き傷がある。
二胡は母親に抱きかかえられているが、さっきの様子はどう見ても二胡が幸助に掴み掛かっていた。
嘘だろう! ガキ大将の幸助がやられるなんて!
見かけに寄らず……いや男兄弟に挟まれているのだ、二胡はかなり腕っぷしが立つのかもと思いつつ、それでもやっぱりこの現状が信じられずに声を掛ける。
「お前ら、何やってんの?」
途端に幸助が叫ぶ。
「こちつが突然殴り掛かってきたんだ!」
「――でも、最初に幸助が……」
健太がムニャムニャと小声で「からかったんだ」と言う。
あちゃー! 額に手を置き天井を仰ぐ。
先にコイツ等にも事情を説明しておくんだった……と今更思ったところで後の祭りだ。
栗林母に文句を言われても仕方がないと申し訳なさ気に見ると、僕の思いとは全然違って、栗原母は幸助の頬の傷を撫でながら、「ごめんね」と涙ぐんでいた。
――もしかしたら……とハッとする。
幾度もこういう経験をしてきたのではないだろうか?
本来なら謝らなくてもいいところを、二胡が話せないのをいいことに、彼女を悪者にして……。栗原母から諦めの色が見え、きっとそうに違いないと思ったらグッと胸が詰まった。
栗原母が再び「すみませんでした」と頭を下げる。そして、僕に向かって、「今回の件はなかったことにして下さい。二胡は連れて帰ります」と言う。
母親の話から、子守でいいのだと分かり少し気が楽になった。
その時だ。デッドスペースから「うわっ!」と笹口の声が上がり、その直後に「こらこら」と美山の慌てた声が聞こえた、と思ったら「ギャーッ」と叫び声が上がる。
何だ何だ、何事が起こっているんだと驚きデッドスペースに駆け込むと……嘘だろう?
僕はそこで立ち尽くし目を見開いた。
僕に一歩遅れてやって来た母親が「あっ」と小さな悲鳴を上げると、慌てたように「二胡ちゃん、止めなさい!」と言いながらその小さな身体に抱き付く。
――これはいったいどういうことだ?
美山は涙目の幸助の頭を撫でているし、幸助の頬には引っ掻き傷がある。
二胡は母親に抱きかかえられているが、さっきの様子はどう見ても二胡が幸助に掴み掛かっていた。
嘘だろう! ガキ大将の幸助がやられるなんて!
見かけに寄らず……いや男兄弟に挟まれているのだ、二胡はかなり腕っぷしが立つのかもと思いつつ、それでもやっぱりこの現状が信じられずに声を掛ける。
「お前ら、何やってんの?」
途端に幸助が叫ぶ。
「こちつが突然殴り掛かってきたんだ!」
「――でも、最初に幸助が……」
健太がムニャムニャと小声で「からかったんだ」と言う。
あちゃー! 額に手を置き天井を仰ぐ。
先にコイツ等にも事情を説明しておくんだった……と今更思ったところで後の祭りだ。
栗林母に文句を言われても仕方がないと申し訳なさ気に見ると、僕の思いとは全然違って、栗原母は幸助の頬の傷を撫でながら、「ごめんね」と涙ぐんでいた。
――もしかしたら……とハッとする。
幾度もこういう経験をしてきたのではないだろうか?
本来なら謝らなくてもいいところを、二胡が話せないのをいいことに、彼女を悪者にして……。栗原母から諦めの色が見え、きっとそうに違いないと思ったらグッと胸が詰まった。
栗原母が再び「すみませんでした」と頭を下げる。そして、僕に向かって、「今回の件はなかったことにして下さい。二胡は連れて帰ります」と言う。