僕と家族と逃げ込み家
「というわけで、今更だけど、まず自己紹介だ。健太から」

「はい!」と元気よく椅子から立ち上がり、健太が名前と学年を述べる。続いて亮、そして、幸助がムスッとした顔のまま自己紹介をする。

「改めまして、僕は美山薫。塾長の若月先生と笹口先生とは同級生だよ。二胡ちゃん、よろしくね」

美山が美人顔でニッコリ微笑みかけると、あんなに無表情だった二胡も少しだけ口元が緩める。美山の美しさはやっぱり最強だ。

「で、彼女は栗林二胡ちゃん。小学一年生。皆より小さいんだから優しくしてやって。仲良くしろよ」

今更だが注意をして念を押すように健太、亮と順に目をやり、最後に幸助を見ると……。

「お前、どうして自分で挨拶しないんだ!」

性懲りもなく幸助がまた突っかかる。
二胡は口を一文字にすると、プイッとソッポを向く。その態度に幸助がまた爆発する。

「お前なぁぁぁ!」

体ごとぶち当たりそうな幸助を、「こらこら」と笹口が割り入る。

「もう、何やってんだ! 幸助、お座り!」

「犬みたい」と健太が小さく呟くと、それが聞こえたのか、笹口が口元を抑えて笑いを噛み締める。美山は笹口を小さく睨むと、二胡にニッコリ微笑む。

「今日は僕が二胡ちゃんを担当するね」

柔らかな口調に場の雰囲気が和らぐ。
流石、美山! 女神様みたいだ。

そうだな、それがいい。普段は担当など決めないが、今日は任せよう!
「よろしく」と頷き、僕と笹口は健太と亮に向き合う。
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