僕と家族と逃げ込み家
「だから、人間捨て身になったら何でもできるっていうことよ」

母はオムライスを頬張り、「やっぱり、あんたのコレ最高!」と頬を緩める。
「それは、どうも」と礼を述べ、叔父は怪訝な表情を浮かべる。

「それは俺に清水の舞台から飛び降りろと言っているのか?」

母が『やりなさい』と言えば、無茶も承知でやらされる。

「あらっ、分かってるじゃない」

案の定だった。

「トヨ子ちゃんに告白して玉砕してきなさい」

うっと叔父が何とも言えない顔をする。
母の中では失恋が前提なんだ……叔父さん、ドンマイ!

「うじうじしているより、そっちの方がずっとカッコイイわ」

母にしてはまともな意見だ。でも、玉砕……しないかも。
恵の話を思い出し、一人ほくそ笑む。

「これを食べ終えたら、はい!」と母がカードキーを差し出す。我が家のだ。

「今、トヨ子ちゃんは家にいるわ」

ジッとそれを見つめ、叔父はゴクリと唾を飲み込む。
「……姉さん」意を決したようにそれを受け取る。

「玉砕したらヤケ酒に付き合ってくれよ」

叔父もまた玉砕覚悟らしい。
「ええ、いいわ」と母が満面の笑みで応える。

「心配しなくても大丈夫。もう、逢沢さんや岡崎パパ、その他諸々に話を付けてあるから」

何のだろうと思っていると「失恋記念大宴会を開くことになっているのよ。守のお金で」とあっさり言う。

それってどうなんだ? 踏んだり蹴ったりじゃないか?
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