僕と家族と逃げ込み家
「マスターもママも美男美女だねぇ! ボーイ君もイケメンだし。ねっ、三人とも映画に出てよ」

何だ、この馴れ馴れしい人は。

「監督、お目が高い!」

商店街の会長だ。監督? このヘラヘラした人が?
どうやら、店に集まっているのは映画関係者と商店街の重鎮みたいだ。

何の映画だろう?

「それにしても、明穂ちゃんがねぇ」
「そうそう、源さんの娘がそんなハイカラな仕事をしていたとは」

聞こえてきた会話は亮の母親のことだ。

「皆さん、ご存じじゃなかったんですね。彼女、業界では超有名ですよ。なんせ、映画の都ハリウッドを拠点に活躍しているんですから」

監督がニコニコ顔で「セレブっていうやつですよ」と自分のことのように自慢する。

「引っ張りだこでねぇ、なかなかオファーが取れないんだけど、僕がこの商店街を舞台に映画を撮るって聞いて、自ら参加させてくれって言ってきたんだ」

超ラッキーだったと監督は相互を崩す。
明日、帰国するというのはこういうことだったのか、と怒りに打ち震える。

「亮のためじゃなかったんだ……」
「ん? 春太君、どうしたの?」

厨房から出てきたトヨ子ちゃんが僕の顔を見るなり怪訝な表情になる。
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