僕と家族と逃げ込み家
「あっ、うん。後でちょっと話があるんだ」

「いいよ、聞くよ」と言いながらも、ちょっと首を捻る。
たぶん、僕の顔が、いつになく真剣だったからだ。

「ところで、どんな映画なんですか?」

叔父が訊ねる。

「ジャンルは恋愛物語ってとこかな。掻い摘んで言えば、少女の再生物語を中心にね……」と監督が説明を始める。

物語は、親を亡くして里子となった少女が過食症になり百キロ近く太ってしまい、それを嫌悪した里親が少女を追い出してしまう……というところから始まるようだ。

シリアスでヘビーな内容だけど……描き方一つ違えばコメディーにも成り得る?

身寄りのない少女は、あてどなくさ迷い歩くうちにとある商店街に辿り着く。

その商店街がロケ先となるこの商店街らしい。

雨に打たれ、道端に倒れていた少女を拾ったのは、商店街で食堂を営む青年。

この青年、陰のあるイケメンらしい。

青年との奇妙な同居生活と、商店街の人々との交流が少しずつ少女を変えていく。

変身した少女は超美女らしい。

次第に惹かれ合う少女と青年。

結末はお決まりのハッピーエンドということだ。

「素敵です! キューンとしました」

説明が終わると同時にトヨ子ちゃんがウットリと感想を述べる。
ああ、こういうの好きだもんな。

「ありがとうございます。こんな美しい人に褒めて頂けたら自信を持って作品が作れます」

監督が紳士の微笑みをトヨ子ちゃんに向けると、途端に叔父がムスッとする。
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