僕と家族と逃げ込み家
「春太は入らないの?」
「ああ、もう少しだけ見てる」
「じゃあ、私も」

本当、旅客ジェットが飛び立つ姿は何度見てもワクワクする。
でも、パイロットになろう、という気はサラサラない。
ジェットコースター同様、あまり乗りたくない。

「……春太、ありがとう」

ん? 何をだ?

「えっと、合格できたのは春太のお陰です。本当にありがとうございました」

そう! 奇跡が起こったのだ!
恵が無事、濱永高校に合格したのだ!

まぁ、あれだけスパルタで勉強したら合格しない方がおかしいんだけど。何はともあれホッとした。でも、改めてお礼を言われると、かなり照れ臭い。

「おいおい、止めろよ。気味悪いぞ」

だから、こんな憎まれ口を叩く。

「何よそれ! ちゃんとお礼を言うのは礼儀でしょう!」

相変わらず恵はよく切れる。
まだまだニボシを与えなくてはと思っていると……。

「それと……合格したら何でもくれるって言ったよね?」

ゲッ! 覚えていたのか。

「だから……」
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