僕と家族と逃げ込み家
とたんに息苦しくなる。
“目を白黒させる”という表現があるが、今の状況にピッタリだ。

一月の新聞で、『お年寄り、餅で窒息死!』なんて記事を見かけたことがあるが、若者でも条件さえ合えば十分にあり得る……と今、我が身で証明している。

『若月春太君(16)、苺大福で死亡!』

そんな見出しが走馬灯のように目の前を通り過ぎて行く。
その途端、我に返る。

いっ、いやだぁぁぁ! そんな恥ずかしいことで新聞に載るのだけは勘弁だ!

力を振り絞りドンドンと胸を叩く。
だが、敵もさるもの引っ掻くもの、そう容易く思い通りにはならない。

塊は不動の如く微動だにしない。
嘘だろ、本当に死ぬのか……?

こういう時、ドラマのように『人が死ぬってこんなに呆気ないのか? こんなことならもっと時間を大事に使えばよかった』なんて陳腐な台詞はひと言も出てこない。

現実は薄れゆく意識の中、秘めた本音を叫んでいた。
『ダメだ! キスもしないで死ぬもんか!』と呆れるような台詞を。
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