僕と家族と逃げ込み家
到着早々ダメージを受けた僕を美山と笹口が「まぁまぁ」と宥める。

「幸助や亮があんなに喜んでるんだから、マスターのこと許してやれ」

笹口がほらと顎で亮を指す。

「お祖父さん、病み上がりなのに、こんな遠くまで来て大丈夫でしたか?」

亮は折り畳みのピクニックチェアを源さんの前に広げると、そこに腰を下ろすように手を取り誘う。

「当たり前だ、ワシはまだまだ元気だ」

そう言いながらも源さんは、椅子に「よっこらしょ」と腰を下ろしホッと息を吐く。

亮のその心優しい行動に……自分の狭い心が恥ずかしくなる。

「それにしても流石ね」

母が腰に手を当て、感心したように別荘を見回す。
それには僕も同感だ。

青い空、白い雲、深緑の葉を繁々と生やした木々をバックに建つログハウスは、威風堂々という言葉がよく似合う。

「私も別荘を買おうかしら?」

夢見る乙女のように両手を組みウットリとしながら呟く母に、トヨ子ちゃんがピシャリと言う。

「先生、別荘に行っている時間などございません!」

「――先生?」と疑問を浮かべながら、「お忙しいんですね?」と逢沢さんが問う。

「若月さんってマンション経営の他にも何されているのですか?」

ドグンと心臓が飛び跳ねる。
うわぁぁぁ! やばいやばいやばい! この人、本当にやばい!

「逢沢さん、姉さんはいろいろゴチャゴチャ忙しいんですよ」

僕の様子に気付き、叔父さんがフォローするが、その雑な説明にガクリと肩が落ちる。

そんなので逢沢さんほどの人が納得するわけない!

「ああ、そうなんだ。このご時世だもんね。忙しいのは何よりだね」

――と思ったのに……逢沢さんは簡単に納得してしまった。
意外に逢沢さんって単純?
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