僕と家族と逃げ込み家
「そういうの『いいね』です」

美山が目を細めて羨ましそうに逢沢親子を見つめていた。

「あら、美山君のお家って、訳ありなの?」

母はここに来てから、すっかり美山にご執心だ。ずっと張り付いている。
これもかなり鬱陶しい。

「母さん、美山に失礼だぞ!」

ギッと睨む。

「僕たちは多感な年頃なの! 内にいろいろあって、小さな頃みたいに明け透けに会話ができないの!」

「あらっ!」と母の眼が怪しく光る。
ハッと口を押える。もしかしたら地雷を踏んだ?

「春太、レポートお願い」

やっぱり……。

「レポート?」と笹口がハテナマークを浮かべる。

追求しないでくれ……。
僕は額に手を当て天を仰ぎ大きく息を吐き出した。

「でもね……」

母の声に、また何を言い出すのかと視線を戻す。

「内に秘めた思いも溜め込むと濁ってくるから、時々、出してあげなきゃダメよ」

美山の顔をウットリと見つめながら母が言う。

とっても良いことを言っている。確かに言っている。だが、なぜか卑猥に聞こえるのはどうしてだろう?

本当、溜息が出る。
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