僕と家族と逃げ込み家
そんな僕と叔父の思いをよそに、次の日、母とトヨ子ちゃんは満面の笑みを浮かべて沖縄に飛び立った。

「行っちゃったねぇ」

空港まで足と荷物持ちに使われた叔父と僕は、二人をデッキで見送り、今、帰宅の途にある。

車窓から空を見上げると、真っ青なキャンパスに真っ白な飛行機雲。
機上の楽し気な母たちを想像すると溜息が出る。そして、更に鬱陶しい人が……。

「トヨ子ちゃーん」

運転席で唇を噛み締める叔父。瞳まで潤ませている。
今生の別れでもあるまいし、大袈裟な!

「さぁさぁ帰って仕事するよ。叔父さんの面倒を見るように頼まれたんだから」
「……何だ、また姉さんか……本当、あの人は!」

それが違うんだよなぁ。
再び空を見上げる。

風に吹かれ、流れ散る飛行機雲を見ながらニヤリとする。
出掛ける前にそう頼んだのは母ではない。トヨ子ちゃんだ。

『春太君に指令を与えます。守さんのお守りです』

どうやら僕が居残りをさせられたのは、叔父さんの監視をさせるためだったらしい。

『守さんは私の怖い眼がないとすぐサボって、糸の切れた凧のようにフラフラどこかにいっちゃいます。逃げ込み家を潰すわけにはいけません、しっかり見張っていて下さい!』

辛辣な言葉だったけど、トヨ子ちゃんのあの目……もしかしたらもしかするかも。

でも、このことはまだ叔父には教えない。もう少し確信を得てからだ!

それにしても、こんなことに僕を巻き込むなよ。
沖縄……行きたかった。
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