僕と家族と逃げ込み家
コトンとテーブルに置かれたのはジュージューと音を立てる鉄板。

その鉄板からモクモクと香りの煙が立ち上る。
牛肉と玉葱が混然一体となった食欲をそそる匂いだ。

途端にグーッとお腹が鳴る。
いくらでも食べられそうだ。

フン、呪いなんてくそ食らえだ! 今から僕はコイツと対戦する。

トマトのマリネ、ポパイエッグのバター醤油炒め、大盛りのライスが次々カウンターに置かれる。

「さて、食おうか」

叔父も席に腰を下ろす。

「いただきまーす」と手を合わせ、早速ハンバーグを口に入れる。

「牛肉が新鮮だったから、ミディアムに焼き上げた」
「メチャ美味! 柔らかい。店でも出したら?」
「出せない。面倒臭い」

だよね。そのままサッと焼いて食べても旨い肉をわざわざミンチにするんだから。

「まっ、裏メニューってことで、常連さんぐらいいいんじゃない? 本当、べリ美味だもん」

モグモグ口を動かしながら褒め称える。

「お前って、食い物に対してだけは素直だな」

何が言いたいんだ?

フンと鼻を鳴らすが、旨い物を食べているから『怒』の感情は続かない。
緩む頬を押えもせず食べ進める。
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