僕と家族と逃げ込み家
健太と亮が顔を見合わせて、意を決したように手を合わせるので、僕も一緒に「いただきます」をする。

二人の様子を伺っていると……恐る恐る口に入れた途端、顔が歪む。

「どうだ、それが大人の味だ」

叔父が二人に言葉をかける。

「甘いばかりが人生じゃない。苦い経験や酸っぱい経験をしてこそ大人の仲間入りができるってものだ。そうだろう? 春太」

どうして僕を名指しする! それは嫌味か!

「とにかく、健太、幸助と早く仲直りしろ。幸助もお前と会えなくて、きっと今頃つまらない時間を過ごしているだろうよ」

「う……ん」

健太は小さく返事をすると、「これが大人かぁ」と顔を歪めながらも抹茶ゼリーを口に運ぶ。

「ところで、春太先生は恵ちゃんと仲直りできました?」

茜よ、このタイミングでその話題を出すとは、些か意地が悪いのではないか?

ほら見ろ、叔父の浮かべた微笑みを。あれを悪魔の微笑みと言わず何と言う。

「茜、春太は大人だから今日中に仲直りするよ」
「あっ、じゃあ、安心ですね」

茜がホッとした顔をする。

「私が旅行に行っている間に、もっと険悪になったらと思って、だって、恵ちゃんには使命を全うする必要があるんでしょう」

琉球ガラスのことを言っているのか?
まったく! どいつもこいつも、お節介焼きばかりだと心の中で舌打ちする。

「ありがとう。大丈夫。心配しないで、旅行、楽しんでおいで」

でも、そう思いながらも、僕はちゃんと大人の対応をする。
フン、どうだと叔父を見る。
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