僕と家族と逃げ込み家
――だが、無視。

「茜は本当に大人だな」
「ありがとうございます、マスター」

――で、二人でほのぼの。クソッ!

「……お土産」

ポツリと健太が呟く。

「何だ? 土産がどうした?」
「お土産……買ってきていいの?」

困った顔で叔父と僕を交互に見る。
まだお土産に拘っているのか……。

「じゃあ、仲直りしてから行けばいいんじゃないか」

叔父が軽く答える。
「うーん」と少し考え健太が立ち上がる。

「うん、行ってくる!」
「ああ、行っておいで」

叔父が満面の笑みで健太の背中を押す。

おいおい、この塾の責任者は僕だぞ。全く!
飛び出して行く健太の後ろ姿を見ながら、フンと抹茶ゼリーを口に入れる。

「先生、僕も温泉まんじゅう買ってきてあげるね」

亮が抹茶ゼリーをチビチビ食べながら言う。

もしかしたら慰められているのか? ポーカーフェイスの亮の顔から何も窺えないが、きっとそうだろう。何だか急に情けなくなってきた。
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