僕と家族と逃げ込み家
〈とにかく、明日、遅刻しないでお福に来てよ!〉

私、もう寝るから、と恵はこちらの返事も聞かずに電話を切る。一応、言い出しっぺは僕なんだけど……恵にすっかりお株を取られてしまった。

まぁ、いいけど。

取り敢えず、モーニングを食べ損ねないようにと携帯の目覚ましを午前五時半にセットする。

それにしても早い!

ベッドに横になり目を瞑ると、暗闇の世界に幸助の顔が浮かぶ。満面の笑みだ。

あいつは強がり屋の寂しがり屋だ。だから、ゴールデンウイークを目前に、周りがウキウキと浮き立つ姿を見たら……そりゃあ、苛立ちも沸くだろう。そして、誰かにぶつけたくもなるだろう。

それでもそれを極限まで我慢したのは、母ちゃんを悲しませたくなかったんだろう。でも……爆発した。

その気持ち、僕には痛いほど分かる。
僕も父親を亡くしたとき、寂しさを一時強く感じたからだ。

クリスマスや正月、春休み夏休み、世の中が浮かれる日ほど、世界は僕に背を向け、僕は独りぼっちなんだと無性に孤独を感じた。中学生だったにもかかわらずにだ。

幸助は小学生だ。その思いは僕以上だろう。
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