僕と家族と逃げ込み家
チェッと幸助は舌打ちすると、「まっ、俺にメグちゃんは役不足か」といつもの負けん気が出る。

「まぁ! 聞き捨てならないわね。誰が役不足ですって!」
「恵ちゃん」

二人のやり取りを聞きながら、本当、こいつら似た者同士だと笑みが零れる。

「ほらほら、喧嘩しない」

叔父はケラケラ笑いながらカーステレオの音量を上げる。
ラジオから流れ出した音楽はジャズっぽい曲だった。

「あっ、俺、これ知ってる。父ちゃんの遺品にあったCDの曲だ」
「へぇ、幸助の親父さんはジャズが好きだったんだ。俺も好き」

叔父が嬉しそうに言う。

「これ、ジャズっていうのか!」
「曲じゃなく、ジャンルがだぞ」

「フーン」と叔父の言葉にハテナを浮かべるものの、幸助は明るく言う。

「俺、もうちょっと大きくなったら、こんなの弾けるように習うんだ」

なかなか渋い奴だ。

「いいんじゃない。ピアノは無理だけどギターとベースなら教えてやるぞ」

叔父が言う。
えっ、叔父にそんな趣味があったとは、驚きだ。料理だけだと思っていた。

「うそぉぉぉ! ほんとうぉぉぉ!」

幸助が、興奮気味に運転席の方に身を乗り出す。
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