僕と家族と逃げ込み家
その時だ。「アァァァ!」と後方から叫び声が上がり、同時に、「アァァァ!」と両隣からも声が上がる。

何だ、と振り向き、「おお!」と僕も声が出る。

「健太と茜!」

ビックリだ。岡崎家御一行だった。
まさか本当に会えるとは。

「恵ちゃーん」
「茜ちゃーん」

女子二人が、キャッキャッと抱き合い小躍りする。

「奇遇ですね。マスターも家族サービスですか?」

笑いながら岡崎父が叔父に声を掛ける。

「お言葉通りです。お食事、これからですか?」
「そうなんですよ。なかなか空席が見つからなくてね」

岡崎父が苦笑いを浮かべる。

「ここにどうぞ。子供たちは一つの席をお尻半分ずつで十分でしょう」
「あっ、私、二つ椅子見つけてきます」

恵の行動は素早い。すぐに白い椅子を持ち帰ってきた。

「はい、岡崎パパママ」
「ありがとう」と二人は椅子に座る。
「僕は何処に座るの?」

健太が突っ立ったまま尋ねる。

「そりゃあ」と恵の隣に座った茜がニヤリと笑う。
「健太は幸助の隣」

顎でクイッと座れと合図をするが全く動かない。
旅行前に仲直りしたのでは?

「……座れば」

幸助はお尻を横にズラすと椅子のスペースを半分開ける。
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