僕と家族と逃げ込み家
「――うーん、『家族』かな」
母の言葉を思い出し言う。
「母さんの理想の家族はサザエさん一家なんだって。あの賑やかな家族団欒に憧れていたらしいんだ」
「サザエさんって、何かダセイな」
昭和を遥か遠く太古と思っている幸助が言う。
「真理さんが?」
恵も理解できないという顔をする。
「初耳だ」
叔父も驚いているようだ。さもあらん。これは偶然聞いた話なのだから。
あれは父の葬儀の日だった。酔った母が、独りお棺に向かって文句を言っていた。物陰に隠れてジッと聞いていると、なぜかサザエさんの話が出てきた。
「サザエさん一家って七人家族だろ。七色の虹に理想の家族を思い浮かべていたみたい」
「そう言えば……」と叔父は思い出したように言う。
「姉さんは昔から寂しがり屋だった」
「春太! あんた、早く結婚しなさい! で、いっぱい孫を作ってあげなさい!」
恵が助手席に乗り出し、ギッと僕を見る。
何だ、その滅茶苦茶な発想は!
母の言葉を思い出し言う。
「母さんの理想の家族はサザエさん一家なんだって。あの賑やかな家族団欒に憧れていたらしいんだ」
「サザエさんって、何かダセイな」
昭和を遥か遠く太古と思っている幸助が言う。
「真理さんが?」
恵も理解できないという顔をする。
「初耳だ」
叔父も驚いているようだ。さもあらん。これは偶然聞いた話なのだから。
あれは父の葬儀の日だった。酔った母が、独りお棺に向かって文句を言っていた。物陰に隠れてジッと聞いていると、なぜかサザエさんの話が出てきた。
「サザエさん一家って七人家族だろ。七色の虹に理想の家族を思い浮かべていたみたい」
「そう言えば……」と叔父は思い出したように言う。
「姉さんは昔から寂しがり屋だった」
「春太! あんた、早く結婚しなさい! で、いっぱい孫を作ってあげなさい!」
恵が助手席に乗り出し、ギッと僕を見る。
何だ、その滅茶苦茶な発想は!