僕と家族と逃げ込み家
しかし、二胡は鋭い眼差しを笹口に向け、睨み付けるように奴を見、プイッとソッポを向く。手強い!

兄云々の自信は瞬時に玉砕したらしい。笹口がガクリと床に手を突き項垂れる。
母親が慌てて「すみません」と謝り深々と頭を下げる。

岡崎母が言っていた。
栗林母は二胡が事故に遭ったのは自分に責任があると思っていると。

だから、どうしても二胡に対して過保護になるのだそうだ。
娘に遠慮しているように見えるのも、そのせいだろう。

今だって、二胡を謝らせるんじゃなくて自分が謝った。なるほどと思う。

「二胡ちゃんは塾へ、ママはコーヒーでもいかがですか?」

場を和ますように叔父がニッコリ笑う。
グッドタイミング! ちょっとこの母親と話したい。

笹口に『二胡をデッドスペースへ!』と目配せする。
『了解』というように奴が軽くウインクを返す……がいつもの覇気はない。お気の毒様。

「行こうっか」と笹口が二胡に笑いかけると、二胡がチラリと母親を見る。コクンと頷く母親。

強い警戒心? 母親への依存心? 一事が万事こうなのだろうか?

二胡の背中を見送り「少しいいですか?」と母親とカウンター席に着く。
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