RAINBOW
プロローグ
夕方から振り出した雨は、夜に入ってだんだんと雨脚を強めている。
耳障りなほどに雨がガラスや屋根に当たる音が部屋中に響く。
でも逆にそれが心地よかった。
テレビもつけていないし、会話をする相手もいないので、部屋は静けさに包まれていたからだ。
岡谷ちひろは目を閉じて、クロのことを考える。
いつも懐っこく寄り添ってきた黒猫のクロは、さっき天へ昇ってしまった。
雨に濡れながら公園の近くの土に、さっきクロを埋めたばかり。
2年もの間一緒にいたクロのことを考えていると玄関のインターホンが鳴った。
急ぎ足で玄関へ向かい、誰なのか確認もせずにドアを開けたのは、ドアの向こうにいる相手に、期待していたから。
ずぶ濡れで立っていたのは、真っ黒色な髪をした男の人だった。

「…クロ?」

そう訊ねると彼は優しく微笑み、ゆっくりと頷いた。
< 1 / 2 >

この作品をシェア

pagetop