私のご主人様Ⅲ
刻々と時間は迫ってくる。
眠ったままの暁くんと奏多さんの手に触れる。…ごめんなさい。
手を離し、もう一度2人の顔を見つめて、ようやく玄関へ足を向ける。
静寂が満ちた、薄暗い廊下を歩く。寝静まった永塚組など初めてだ。だからこそ、気持ちが悪い。
玄関の戸を開け、門を見る。
これを開ければ、終わる。今まで感じてきた恐怖も緊張も全て終わる。
…お父さん、成夜。
脳裏に浮かんだ2人の顔に、最後の迷いを断ち切る。
手を伸ばす。
浮かんでくる思いを、顔を、全て断ち切る。
これは裏切りだ。今更後戻りなど出来ない。選んだのは私。後悔もしていない。なら、もうこんな思いはいらない!!
門扉を開けた。これでれっきとした裏切り者だ。
苦笑がこぼれる。それが意味がするものは分からない。