私のご主人様Ⅲ

次の瞬間、伸びてきた手に捕まれ、引き寄せられる。

「よくやったね~琴葉チャン」

抱き締められている。頭を撫でる手は昼間確かに私を切り離した手だ。

顔を上げると、舛田は見慣れない黒スーツに身を包んでいて、昼間のチャラ男とは思えない覇気を出す。

これが、舛田 颯なのだろう。そんなことをぼんやりと頭の隅で認めた。

「やるぞ」

そんな舛田の一言と共に、一瞬のうちにあちこちから光源が出来て目が眩む。

恐る恐る目を開けると、思わず息を飲む。暗闇に紛れていたらしい闇色の車が少なくとも10台はある。

だが、降りてきたのは車の数には似合わず20人ほど。

少数精鋭の体制なのか、いずれも屈強そうに見えた。10人くらいが駆け込んでいく。

その後を追おうとしたけど、肩をつかむ手に力が入った。

「琴葉チャンは俺と一緒ね。勝手に逃げられると困るんだよねぇ」

「…」

ニヤリと口角を上げる舛田に悪寒が背筋を撫でる。

何か、とんでもない勘違いをしてしまったようなそんな危機感がある。

だけど、今更どうこうできるわけもなく、舛田に押されるがままに屋敷の中に戻る。
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