私のご主人様Ⅲ

「お前だってさ、ここちゃんのこと騙したくせに。自分のことは棚に上げといて、いいご身分だなぁ。おい」

信洋さんにしては随分刺々しい。

でも、反面舛田に対してざまぁみろと思ってる悪い顔もある。

時々ドスッとか、呻き声とかが聞こえてきたような気はしたけど、季龍さんがさりげなく耳を塞いでくるのは、聞かれたくないからだ。

なら、私も聞かないふりをする。それが、ご主人様の要望なら、私は従うまでだ。

「若!制圧完了しました!」

「怪我人もいません」

部屋に飛び込んできたのは暁くんと奏多さん。2人に視線を向けた季龍さんは口角を上げる。

怪我をした様子のない2人に、思わずホッとした。

「っ宮内 琴葉!!いいのかってめぇ、親のとこに帰れなくなっても!!!」

不意に響いたその声に肩が跳ねる。思わず振り返ると、憤怒の顔で私を睨み付ける舛田と視線が重なる。

…でも、罪悪感とか、後悔とかそんなものは湧かなくて、ただこれで良かったんだと安心するばかりだ。
< 119 / 286 >

この作品をシェア

pagetop