私のご主人様Ⅲ
「お前だってさ、ここちゃんのこと騙したくせに。自分のことは棚に上げといて、いいご身分だなぁ。おい」
信洋さんにしては随分刺々しい。
でも、反面舛田に対してざまぁみろと思ってる悪い顔もある。
時々ドスッとか、呻き声とかが聞こえてきたような気はしたけど、季龍さんがさりげなく耳を塞いでくるのは、聞かれたくないからだ。
なら、私も聞かないふりをする。それが、ご主人様の要望なら、私は従うまでだ。
「若!制圧完了しました!」
「怪我人もいません」
部屋に飛び込んできたのは暁くんと奏多さん。2人に視線を向けた季龍さんは口角を上げる。
怪我をした様子のない2人に、思わずホッとした。
「っ宮内 琴葉!!いいのかってめぇ、親のとこに帰れなくなっても!!!」
不意に響いたその声に肩が跳ねる。思わず振り返ると、憤怒の顔で私を睨み付ける舛田と視線が重なる。
…でも、罪悪感とか、後悔とかそんなものは湧かなくて、ただこれで良かったんだと安心するばかりだ。