私のご主人様Ⅲ
「ここちゃんには舛田に交渉に乗った振りをしてほしい。俺の言う通りに情報を伝えること。できる?」
「コク」
「はは、即答か。…でも、本当に危険だから、決して油断はしないこと。危ないと思ったらすぐに逃げていいからね」
「…コク」
「いやいや、そこ即答しなよ。…はぁ、若に怒られるだろうなぁ~」
天井を見上げ、息をついた信洋さんは、本当にバカだねってささやくような声をこぼした。
それはなかったように信洋さんは私に視線を向け、座り直して試すような目を向けられる。
「それで、ここちゃんの望みは何?」
「…」
「まさか、ないなんて言わないよね?本当なら、伝えてそれでおしまいでいいのに、芝居を打ってまでこんな危険を犯すんだから。…ここちゃんは何を俺に、永塚組に望むの?」
向けられた目はいつもの優しい瞳じゃない。
舛田には永塚組からの解放を交換条件にされたのに、それを蹴り永塚組に与する理由を求められる。