私のご主人様Ⅲ
信洋さんと視線を向けあったまま、手を握り込む。
緊張感が体を支配して、蛇に睨まれているようだった。
「…」
望むもの。そんなの、決まってる。
お父さんのところへ帰ること。
でも、それは許されない。この人たちは、私を逃がすことはしない。
…なら、せめて、せめて私が生きていることだけでも、伝えられないかな。
『父に、私が生きていることを伝えてください』
「…伝える、それだけでここちゃんはこんな危険なことをするの?」
「…コク」
「…分かった。成功したら必ず伝える。ここちゃん、頼んだよ」
威圧感を消した信洋さんが差し出した手に自分の手を重ねる。
*****
こうして信洋さんとの約束を交わし、私はあたかも舛田の計画に乗った振りをしていた。