私のご主人様Ⅲ

奏多さんが先導する廊下を進み、離れから母屋に戻る。

事後始末で行き交う組員の間を進み、琴音の部屋を目指した。

「っことねぇ!!」

部屋に入る直前、玄関先から響いた声に思わず振り返る。

組長とお嬢は万が一のため、車で避難していた。制圧の連絡を受けてすぐに戻ってきたんだろう。

駆け寄ってきたお嬢は、琴音の姿を見るなりその顔を真っ青にさせる。

「っことねぇどうしたの!?まさか、大怪我したんじゃ…」

「怪我は誰もしていません。熱が悪化して倒れたんです。…お嬢、琴音ちゃんは女の子だから、お嬢に頼まなきゃいけないことはたくさんある。でも今は俺と暁に任せてくれませんか?」

口を開こうとした俺より先に奏多さんが話始める。お嬢を落ち着かせる言葉を簡単に選んだ奏多さんは、決して焦りを見せずに笑ってまで見せる。

俺にはそんな余裕がない。

お嬢を安心させ、次の動きにすぐ移せるような気遣いもできない。

1つしか違うのに、奏多さんとの間に厚い壁があるような気がして、悔しくて仕方なかった。
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