私のご主人様Ⅲ

「分かった。…朝になったら、お見舞い来てもいいよね?」

「はい。お願いします」

納得したお嬢は、他の人たちを見てくると言ってまた駆け出していく。

それを見送ることなく部屋に入り、奏多さんが敷いた布団に琴音を寝かせる。

「暁、手首と肩に傷がないか一応確認しといて。先生呼んでくる」

「俺が行きます。奏多さんが琴音を見ててください」

本当は奏多さんの言葉に従いたくなった気持ちを押さえる。

いくら復帰したとはいえ、本調子でない奏多さんに無理をさせることはできない。だから動くのは俺の役割だ。

「…分かった。あとタオルと氷袋作ってきて」

「分かりました」

指示を受けて部屋を出る。

まだ落ち着きを取り戻していない屋敷の中は、それぞれがそれぞれの役割を果たすために動き続けている。

その人の間を抜け、待機していた医者に琴音のことを伝えて向かってもらう。戻る前にタオルと氷袋。ついでに風呂からお湯を持ってきて琴音の部屋に戻った。
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