私のご主人様Ⅲ
「ストレスもあると思いますが、風邪が悪化していますね。脱水症状もあるようなので点滴しましょう。外傷部分は下手に触らないように。痛みがあるなら湿布も使ってあげてください」
部屋に戻ると丁度診察を終えたところだったらしい。
持ってきたお湯とタオルで腕を拭いてやり、医者が点滴をさした。
さっきより火照った顔をした琴音は、起きる気配がない。顔を拭いてやっても眉を潜めるだけで目を覚まさない。
「疲れたんだよ。心配しなくてもちゃんと息してるだろ?」
「…分かってますよ。そんなこと」
見透かしたような奏多さんの言葉に反論しつつ、氷袋を琴音の額に当てる。また顔を歪めたけど、気持ちがいいのか少しだけ表情が緩んだ。
「…先生、この傷全治何ヵ月ですか」
「…少なくとも1ヶ月はかかるだろう。今のこの子では、もっとかかってもおかしくないけどね」
「そうですか…」
不意に尋ねた奏多さんに答えた医者は、薬を置いて部屋を出ていく。
その去り際に、かわいそうにとこぼしたのは気のせいか、医者は振り返らずに去っていった。