私のご主人様Ⅲ

不意に鳴り響くチャイムの音。見れば6限の時間を終えていて、先生は一応帰りの挨拶をする。

準備は続くから本当に形だけだけど…。

そんな中、私だけ帰りの支度を始める。仕事は持ち帰っているとはいえ、誰も帰らないのに私だけ帰るのは気が引けるのは変わらない。

荷物を持って華さんと麻夏くんに向き直ると、笑ってくれた。

「葉月さん、また明日」

「こっちは任せて。また明日ね」

『ありがとう。また明日』

タブレットに打ち込み、2人に手を振って教室を出る。

校門まで行く道すがら、私と同じように帰る生徒の姿もちらほらあるものの、いつも同じ顔はほとんどいない。

みんな頑張ってるんだなぁなんてのんきに思いながら校門を出た少し先に止まっている車を見つけ、近づいていく。

向こうも私に気づいたのか、車の中から2人出てきた。そのことに自分でも自然と表情が緩んだのが分かった。
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